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肉まんの味

肉まんの味

死のうと思ったことは、あるさ。にんげんだもの。河のむこうを見つめていた。暗くなるまで草の上に坐っていた。

じぶんをごみのように感じた。生きているのがつらかった。そんな時、あのひとが来て、となりに坐った。肉まんを差しだされた。ぼくの人生の先輩だ。

「食うか?」

食べたよ。食べなきゃ悪い気がしたし、凄い迫力なんだ。

「うまいか?」

ちょっとしょっぱく感じた。けれど、うまかった。

「はい、うまいです」。

にんげんって、死のうとしている時でも、ものを食うことはできるんだ。哀しくなんかなかった。きもちはからっぽだったけれど。夕風は冷たかったけれど。

生きることが、つくづくいやになったら、肉まんを食べるといいよ。肉まんを食べても、問題は解決しない。けれど、肉まんはうまい。人生が暗転しても、肉まんは変わらずうまいんだ。

わかるか。

人生なんて、どこを切っても同じ。金太郎飴みたいなもんだ。

けれど、肉まんはうまい。

肉まんがうまけりゃいいじゃないか

ほかのことはどうでも。

20170322

糸川草一郎