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キング・クリムゾン

キング・クリムゾンが百科事典に載っているとは知らなかった。69年にデビューし、現代音楽史に強烈な“傷”のようなものを遺していった、イギリスのロック・バンドである。

彼らの衝撃の最初は、何と言っても、まずはデビュー作の「クリムゾン・キングの宮殿」である。冒頭の「21世紀の精神異常者」。この邦題は別に極端な意訳ではなく直訳に近い。不安をあおるイントロから、いきなりファズのような強烈な歪んだギターとブラスのリフ。ヴォーカルにもファズがかけられ、歪んだ声で歌われる攻撃的な詞。ブレイク多用の演奏。金切り声のようなサックス。そして破滅的な狂気のエンディング。すべてが衝撃だった。アルバム・ジャケットの阿鼻叫喚を思わせる地獄絵。この男の顔のアップを描いた画家は、本作発表直後に急逝してしまうが、このジャケットも同様に衝撃だった。

メンバーの変動が激しく、72年にはリーダー以外総入れ替えになって再出発したが、この第二期クリムゾンは即興演奏に長けた有能な音楽家ばかりが集ったけれど、ライヴでの異常なほどの緊迫感を保ちつづけるのは、大変な事だったという。それゆえたった一時間でコンサート終了も稀ではない。74年のラスト・アルバム「レッド」のアルバム・ジャケットでの三名の写真は、集合写真などではなく、ひとりひとりを個々に撮り、それを合成したものだという。メンバー間の緊張感でまともな写真すら撮れなかったのだ。このアルバムのラスト・ナンバー「スターレス」での、メロディアスなもの一切を完全否定するような、一音だけを延々と弾きつづけるギター。変拍子による圧巻のクライマックスの演奏は、40年以上が経過した現代においても、その衝撃をいささかも失っていない事に新たな衝撃を受ける。まさに存在そのものがショッキングだった、稀有なバンドであった。